山口医院 理事長 田口朗様

山口医院 田口 朗
1990年、東北大学医学部卒。京都大学大学院、京大病院眼科助手を経て、1998年からハーバード大学眼科に留学し網膜疾患について研究。2000年帰国後は、高松・大阪赤十字病院眼科副部長、2015年より栃木医療センター眼科医長を歴任。2018年より現職。専門は眼科手術

新型コロナウイルスは口や鼻や喉の粘膜だけでなく、白目の表面や瞼の裏側にある粘膜(結膜)にも感染することが知られています。感染者の咳やくしゃみによる飛沫が直接目に入って感染する場合と、ウイルスの付いた物体(手すりやドアノブなど)を触った手で目を擦って感染する場合が考えられます。頻度としては後者が多いでしょう。従って、むやみに目を擦らないことと、目の周りを触る前には石鹸でよく手を洗うことが大切です。外出先など直ぐに手を洗えない状況に備えて、ウェットティッシュを携帯し手を拭くだけでもリスクは減ります。また、感染が疑われる人に近づく際やいわゆる3密(密閉・密集・密接)環境ではゴーグルのような眼鏡をかけると飛沫感染を予防できます(目を触らなくなる副次効果もあります)。花粉症やドライアイ予防の眼鏡や眼科手術後にかける保護眼鏡など既製品で問題ありません。なるべく顔に密着するタイプが良いでしょう。

結膜に感染すると、濾胞性結膜炎という瞼の裏の粘膜に小さなぶつぶつができるタイプの結膜炎を起こします。白目が充血し、目やにや涙が多くなります。新型コロナウイルス感染症に結膜炎が合併する頻度は0.8〜30%と現時点では報告にかなりばらつきがあります。実際に結膜や涙から新型コロナウイルスが検出された頻度は2-5%位と報告されており、結膜炎の合併頻度はかなり低いと考えられます。結膜だけからの感染が肺や全身に拡がる可能性は、否定はできないものの証明されていません。多くは口や鼻や喉と同様に目にも感染し、肺には鼻や喉からの感染が拡大しているのだとと考えらます。ですから目が充血したからといって直ちに新型コロナウイルス感染症を心配する必要はなく(結膜炎を起こす原因は他にも色々あります)、発熱や息苦しさなどが起きてこないかに注意を払うことがより大切だと思います。

Q1.新型コロナウイルス感染症対策で目を洗ったほうがいいの?

有効性は証明されていません。もし洗う場合は、専用の目薬を3-4滴さして流すように洗浄する方法を推奨しますが、あまり頻回に行うと本来涙に含まれる免疫成分をも洗い流してしまうことになり逆効果です。また、誤った洗眼方法により睫毛や瞼の皮膚についた細菌やウイルスを結膜に触れさせてしまう危険もあります。咳やくしゃみによる飛沫が直接目に入った直後でなければ洗眼に効果はないと考えます。予防で大切なのは、むやみに目を擦らないこと、目に触る前に手を洗うこと、状況によりゴーグルを装用することです。

Q2.新型コロナウイルス感染症が流行している時期に目の手術を受けても大丈夫?

通常の眼科手術によって新型コロナウイルス感染が拡大するリスクは極めて低いと考えますが、患者さんが感染に気付かないまま手術を受けた場合に、手術以外の場面でウイルスが他の患者さんや医療従事者に感染し院内集団感染が発生する可能性が指摘されています。そのため緊急性のない手術を延期する医療機関が増えています。ただし眼科でも緊急を要する手術や病気がありますので、手術時期について主治医とよく相談されることを勧めます。既に手術予定が決まっている場合は、毎日体温を測定して37.5℃以上の発熱が2日以上続いたり息苦しさ倦怠感を感じたら、主治医に連絡し手術の可否について確認して下さい。
※2020年4月末時点での知見に基づく見解

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